映画『ペンギン・ハイウェイ』のアオヤマくんはどんなふうにノートを使いこなしているか(3)
みなさんこんにちは、あなたの街の文系男子、トム・ヤムクンです。
森見登美彦原作のアニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』で、ノート(モレスキンラージとツバメノート)がどのように使われているのか、を検証するシリーズの最終回です。
これらのノートがストーリーの核心にも深くかかわる都合上、ネタバレありでお送りしています。
突如、街にあらわれたペンギンと、そのペンギンと深いかかわりを持つ「お姉さん」を、ノートを駆使して研究する生意気小学生、アオヤマくん。そのアオヤマくんが、数々の驚異に遭遇しながら、ついにそれらの謎に答えを見出すときが訪れます。
ふたつのグラフ
さて、ここでアオヤマくんが赤いモレスキンラージに書いているふたつのグラフがあります。
・〈海〉(平原にあらわれた謎の球体)の大きさの推移を示すグラフ
・お姉さんの元気さをあらわすグラフです。
〈海〉はSeaの意味ではなく、主人公たちがそのように呼んでいるこの物体の呼び名です。広い平原にあらわれたゼリー状の球体で、これが外部から刺激を受けると波打ったり、また日によって大きくなったり小さくなったりします。
さて、いよいよアオヤマくんが結論にたどり着きます。ちなみに「エウレカ」というのは、知っている人も多いと思いますがアルキメデスがお風呂に浸かっているときにある科学的発見をし、「わかったぞ!」という意味で叫んだ感嘆詞です。このアオヤマくんの「エウレカ」をもたらしてくれるのも、実は赤いモレスキンラージ。
さきほどの「ふたつのグラフ」の関連性に気づくことにより、アオヤマくんは〈海〉とお姉さんの抜き差しならない密接な関係について発見するのでした。
こうして見てみると、この物語はまさにノートがその中核をなす、ノートによるノートのための物語だと言えるでしょう
このように「記録と思考のためのツール」という役割を終えたノートでしたが、ラストではまた違った味わいを醸し出してくれます。
お姉さんとの別れの直前、風でノートのページがめくれます。ここまで視聴者の前でおこなわれてきた数々の記録、とりわけ、お姉さんに関する記録が、アオヤマくんと視聴者の思い出をくすぐってくれます。このシーンはもう涙なしには見られません。
このように、ノート抜きには語れない映画(原作の小説も同じですが)『ペンギン・ハイウェイ』。もちろん手帳やノートなどについて意識しなくてもじゅうぶんに楽しめる作品ですので、ぜひぜひチェックしてみてください。
トム・ヤムクンでした。