手帳――鵺のごとき万能ツール

みなさんこんにちは、夏が終わったばかりで涼しく、頭の冴える季節がいちばん好きな文系男子、トム・ヤムクンです。

 

今日は、手帳の使い方などの具体論から離れて、「手帳」という概念そのものに関して考えてきたいと思います。

 

 

 

手帳の発祥と、「手帳を使いたい」という欲求。しかし、そこには大きな見えないギャップがある件

手帳というものの発祥は、資本主義社会の拡大によって多くの人が「同時に、同じ場所に集まって仕事をする」という世の中が成立したことと密接な関係を持っているはずです。

 

つまり「始業時刻」というものを多くの人が意識せざるをえなくなったために、決まった時間に決まったことをする、という習慣が根付き、それが、手帳の需要を生み出したのではないでしょうか。

 

スマホ全盛の時代にあっても現代日本でバカ売れしている「手帳」ですが、「手帳」という言葉の意味するものは、実は話し手によってけっこう違うものだ、ということにはお気づきでしょうか?

 

「手帳」の意味するもの

現代日本人が「手帳」という言葉を口にしたとき、その意味合いには、以下のようなパターンがあるはずです。

タイプ1. 手帳=スケジュール帳
タイプ2. 手帳=日記
タイプ3. 手帳=アイディアノートスケッチ、イラストを描くノート
タイプ4. 手帳=プロジェクト管理をするためのノート
タイプ5. 手帳=GTD的行動管理をするためのノート

このほかにもあるかもしれません。大事なのは、あなたの周囲の人が「手帳を使いたいけどうまく続かない」と漏らしていたとき、タイプ5.を想定して、フランクリン・コヴィーの思想について熱く語ってしまったとしたら、実はその相手がタイプ2.で、大ひんしゅくを買ってしまった――というのは普通に起こることだ、ということです。

 

 

この断絶の正体

このマリアナ海溝のように深くて致命的なギャップは、どのようにして起こるのでしょうか?

ひとつには、その人が拠り所としているのが未来なのか過去なのかの違い、という理由付けができるかもしれません。

基本的なスケジュールはどんな人であれ書き込んでいるとしても、アイディアノートやプロジェクト管理に使う人は「未来」タイプで、日記的に使う人は「過去」タイプです。

あるいは、手帳によって充実させたいのが仕事なのか(タイプ4,5)、プライベートなのか(タイプ2,3)、または、手帳をモノとして大事にするのか(タイプ2,3.)、単に機能を享受したいだけなのか――すなわち中身がデータなりに保存できるなら、手帳の紙面そのものは捨てても構わないのか――(タイプ4,5)という分け方も可能でしょう。

「過去」タイプと「未来」タイプの断絶

こうして見てみると、ひとまずタイプ2,3と4,5の間には大いなる断絶がありそうですね。モレスキンやトラベラーズノートなどといった、いわゆるおしゃれ系ノートは、「過去」タイプの2,3の傾向を強く意識して売られているような気がします。まあ、やはり機能だけでなくモノとしての価値を感じやすいほうが、ロマンを見いだせる商品として成立するのでしょう。

 

このように、単純なようでいて実は、非常に多様な意味を持つ「手帳」という言葉。この言葉の奥深さは、日本という大手帳社会の繁栄の象徴ともれます。

「手帳」という一括りの言葉にまどわされず、自分のタイプをきちんと把握してから手帳選びをするとよいかもしれません。

 

 

トム・ヤムクンでした。

トム・ヤムクン

ライフハックと手帳を駆使して作家を目指している人。得意分野は手帳と日本史。Twitterアカウント:@tomyumkung01 ※このブログはAmazon.co.jpアソシエイトに参加しています。

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