大河ドラマになってほしい おすすめ異説もの歴史小説3選

こんにちは、ときどき「モレスキンが欲しくてたまらなくなる病」にかかってしまうトム・ヤムクンです。
 
みなさんの中には大河ドラマを観る方も多いと思いますが、ここ数年ずっと、「大河ドラマはもうネタ切れ」とか、「戦国と幕末の繰り返しばかりでつまらない」とか、「無名の人物を主人公にされても興味がわかない」とか、けっこうさんざんな言われようですよね。
 
僕も、大河ドラマのネタというのはそろそろ限界に来ており、ここらで抜本的な改革をしないと、ヘタをすれば新元号の時代が始まってからほどなくして大河ドラマは終わってしまうのではないか、と本気で心配しています。
 
とにかく戦国と幕末の繰り返し、というのがこのネタ切れの原因であることはあきらかなので、飛鳥~平安を真正面から扱う、などの思い切った改革をしないかぎり、この状況はかわらないのでは、という気がしています。
 
ただ、大河ドラマにはもうひとつ、生き残る道があります。それは「異説もの」を扱うこと。ここでは「異説もの」とは、「学術的に、あるいは一般に広く了解されている歴史の内容とは違ったことが起こったという体で描かれる物語」と、いちおう定義しておきます。
 
そこで今回は、僕がぜひとも大河ドラマの原作に使ってほしい小説を3作、紹介します。
 
 
 

1.『影武者徳川家康』隆慶一郎

これは、「徳川家康は実は関ヶ原の戦いで暗殺されており、その後、存在した家康は影武者が身代わりをつとめたものである」という発想をもとに書かれた小説です。主人公である影武者というのが、農民でも、いわゆるまっとうな武士でもなく、全国をさすらって生き、反権力思想にあふれる「漂泊民」として描かれています。
 
そこから、彼を操って自らの天下を盤石なものにしようとする徳川秀忠との果てしなき戦いが繰り広げられることになります。
 
隆慶一郎は網野善彦という歴史学者の「網野史観」を濃厚に受け継いでおり、この主人公の影武者のほかにも、「武士―農業民」というよく知られた中世世界の構成員とは異なり、権力におもねることをよしとしない非農業民(忍びや芸能民、一向宗門徒)などが生き生きと描かれています。
 
実はこの作品はテレビ朝日およびテレビ東京によって過去に2度、映像化されているのですが、かなりの長さを持つ作品なので、1年間の放送にも耐えられるだけの魅力と内容の厚みを持っています。

 
 
 

2.『女信長』佐藤賢一

『王妃の離婚』で直木賞を受賞した佐藤賢一が、はじめて日本史を題材に描いた作品です。
「織田信長は実は女だった」という設定のもとに、女であるがゆえに「男が戦をしたがるばかり」の世の中を忌み嫌い、大胆な発想や女の肉体を駆使して天下を取ろうとする姿が描かれています。見どころは、浅井長政や、その他の有名武将との恋愛!(男と女としての)
 
「女ならではの視点で(というと現代社会ではジェンダーフリー的にナシですが、この時代にこの発想はありえたでしょう)男ばかりが勝手をする戦の世の中を生き抜いていく信長」の姿が、この作品を魅力あるものにしています。
 
こちらも天海祐希主演で映像化されたことがあります。

    
 
 

2. 『安徳天皇漂海記』宇月原晴明

上記2作品に比べてこちらはちょっとマニアックな題材。前半は源氏の天下の終わりを感じ取り、暗い影を引きずって生きる鎌倉幕府三代将軍・源実朝と、彼に使える名もなき侍の少年、後半は国を追われて流浪する南宋の少年皇帝・趙昺が中心となり、壇ノ浦で崩御したはずの安徳天皇の魂との交流が語られていきます。
 
非常に幻想的な筆致で安徳天皇や源実朝などの悲劇を語るこの物語は、何度でも読み返したくなる美しさを持っています。渋沢龍彦の『高丘親王航海記』、太宰治の『右大臣実朝』などが下敷きになっていますので、これらを既読の方にもおすすめです。
 
二代将軍・頼家と三代将軍・実朝は、日本史の学習ではさらっと済ませてしまう人物ですが、実は幕府という概念を理解するのに欠かせない人々です。頼家は「臣下」であるはずの北条氏に殺されてしまうのですが、北条氏はとくに反逆者扱いされるでもなくそのまま幕府の運営を続けていますし、実朝が暗殺されたあとも、北条氏は執権政治によって幕府を牛耳っています。
 
征夷大将軍というと、家康や綱吉のような強権的な君主を想像しがちですが、頼家や実朝に関しては、「お飾り」の面も非常に強くあったことがわかるのです。

 
 
 
以上、僕が個人的に大河ドラマにしてほしい異説ものの歴史小説をご紹介しました。大河ドラマは長い歴史を持つ枠ですので、ぜひ改めるべきは改めて今後も続けてほしいですね。
 
トム・ヤムクンでした。
 
 
 
 

トム・ヤムクン

ライフハックと手帳を駆使して作家を目指している人。得意分野は手帳と日本史。Twitterアカウント:@tomyumkung01 ※このブログはAmazon.co.jpアソシエイトに参加しています。