大学入試の小論文攻略(4 ) ~抽象的なテーマ編~
みなさんこんにちは。古文はできませんが現代文ならそこそこ自信のある、トム・ヤムクンです。
これまで、3回にわたって、小論文の書き方に関するお話しをしてきました。
そして、今回で小論文の具体的なお話に関してはひとまずラストにしたいと思います。
今日は、苦手な人はもっとも苦手なネタ――「抽象的なテーマに関しての小論文」です。
抽象的なテーマとは
この「抽象的なテーマ」というのは、たとえばこういうやつです。
「勇気」について、あなたの考えを書きなさい。
どうです? なかなか困った設問でしょう。これはヘタをすると、「勇気は大切である。なぜなら~」という、非常に抽象的で禅問答のような話にならざるを得ません。
このような場合に有効なのが、「具体的な状況設定における問題提起」に話を絞る、ということです。
また、この抽象的なテーマは、「大学側が、その学部を志す学生にとって大事だと考えているテーマ」であることも多いです。
教育学部なら「人を育てるということ」とか、経済学部なら「グローバル人材にとって必要なこと」とか。
こうなると、大学のこれらの概念に関するスタンスを、大学案内などできっちりとチェックしておくことは有効でしょう。ただ、それをしなかったところで、「これからの社会にはグローバル人材は害悪でしかない」というような、一般的な世論から著しくかけ離れたような意見を言うのでないかぎり、べつに大丈夫です。
「書く内容」まで抽象的であってはならない
それでは、このタイプの小論文の具体的なポイントを述べていきます。
具体的な状況設定をする
最初に、その概念が問題となっている具体的な状況を設定しましょう。
たとえば、テーマが「勇気」であれば、以下のような展開が想定されます。
近年、「電車やバスなどで優先席をお年寄りに譲らない若者が増えた」という意見を耳にする。さまざまな例を調べてみると、「譲りたい気持ちはあるが、いざ席を譲ろうとしても拒否されたり、『自分はまだ年寄りではない』と怒られるのが嫌だ」という意見がみられた。このように、若者が席を譲る勇気を持てないでいるこの状況には、どのような背景があるだろうか。
具体例といっても、なんでもいいわけではありません。現代の日本国内ならまあ誰にでもあてはまる普遍的な例や、あるいはニュースで取り上げられたりして話題になっているようなタイムリーな例がよいでしょう。
逆に、自分のみにしかあてはまらない話に終始したり、それを読んだ人が応用しづらい、あまりにも特殊な事例をかかげてはよろしくないでしょう。(ダメな例:「私は先日、ロッカーのなかに興味本位で入ったところ、クラスのみんながそこへやってきてしまった。出ていってウケを狙うべきか、じっと潜んでいるべきか」)
その設定をもとに話を進める
そして、その状況設定におかれた人が「どうあるべきか、どう行動すべきか」、ということに関して話を進めていくのです。
こうなると、前回、ご紹介した「社会的なテーマ」のお話と限りなく近い書き方ができることにお気づきでしょう。
つまり、この「抽象的なテーマ」の小難しい部分はこの序論を、どのように具体的かつ意義深い話にできるか、というところなのです。
最後に自分の未来像とからめることができるとなおよい
そして、できたらこの話を終わらせる前に、結論のところでそのテーマとなった話を自分にあてはめ、自分の「未来像」的なものを語れるとなおよいでしょう。
例:「このように私は、勇気を出すのは、その勇気が目的を達成できるときに限るべきだと思う。そして、その裏付けとなる日頃の勉強や、自分を磨くことを忘れてはならない。私自身もこれからの大学生活において、自分の勇気が試されるときのために日頃の努力を忘れないようにしようと考えている」
何度も言いますが、あくまでも大学入試の小論文の目的は「自己PR」です。そのため、「人間にとってはこの能力が大事。ちなみに私はもちろん、それを持ってます」と、ちゃっかりアピールすることで、優秀な学生であることを印象付けられるのです。
以上、「抽象的なテーマの小論文」への対策をお届けしました。
次回はこのシリーズの最終回。どんな小論文にもあてはまる、文章の構成のしかたについてお話ししていきます。