恋愛と公共交通機関の奇妙な共通点をめぐる冒険

「席を譲ってほしい老人」問題

「ご老人に電車やバスの中で席を譲るかどうか」的な問題は、公共交通機関が普及してこの方、日本の永遠のテーマといっても過言ではありませんよね。
 
この問題を僕なりにまとめると、論点は以下のように集約されます。
 
老人「老人は若者に席を譲ってほしい」
若者パターンA「いやだ、自分たちだって座りたい」
若者パターンB「譲ってもいいという気持ちはあるけど、いざ譲ったら断られたり、『自分はまだそんな歳じゃない』と逆に怒られることがあるから譲る気をなくしてしまった」
 
若者パターンAに関して言えば、少なくともこのような人も「すべての席を老人に譲るつもりはない。優先席も若者に使わせろ」ということではないようですので、ご老人の方々のための優先席は確保されています。よかったですね。
 
 
さて、今回、僕がメインで取り上げたいのは「若者パターンB」のほうです。
 
これって、けっこう大切な問題だと思いませんか? 彼らは「席を譲る気はなくもない」んです。
でも、「自分たちが譲る申し出をすることで、非難されるのは嫌」なんです。一方、確実に「席を譲ってほしいお年寄り」たちはいるので、彼ら「譲ってもいいよ組」の需要はゼロではない。でも、その需要は供給に結びついていない。
 
困りましたね。これではラチがあきません。
 
別角度からこの問題を検証するためにここで、最近あまりよろしくない意味で話題の「マイナビウーマン」の記事を2本、ご紹介しましょう。
 
 
 

「告白・プロポーズしてほしい女子」

以下のような女性向けの記事って、ネットにあふれていますよね。
 
 
ここで紹介した2本の記事の主旨は「明らかに脈がありそうなのに告白してこない男性にいかに告白させるか」「女性側は結婚してもいいいと思っているのに、彼氏がプロポーズしてこないという状況でいかにプロポーズさせるか」というものです。
 
彼らはどうして「告白やプロポーズをしない」のでしょうか?
 
「うーん、やっぱりぃー、男の子も恥ずかしいっていうのもあると思うしぃー、告白とかプロポーズとかってやっぱ一世一代の勝負じゃん? だから怖いっていう気持ちも多少あるとおもうしぃー」
 
まあじつはそれは本質的な問題ではなくてですね、先ほどの「老人に席を譲りたい気はあるけど結果的に若者が譲らない」問題と、「告白・プロポーズしてほしいけど男性がなかなかしてこない」問題には、共通の解決法があると僕は思います。
 
それは、「受益者負担」すなわち「何かをしてほしい側が、してくれ、と頼むこと」です。
 
 
 

受益者負担があたりまえじゃん

これをまずは「老人に席を譲るうんぬん」の問題にあてはめてみましょう。
 
ここでは、「席を譲ってほしい老人」が「席に座っている若者」に「席を譲ってくれませんか?」と頼むことになります。
 
そもそも「席を譲りたい気持ちあるけど、断られたり怒られたりするので結果的には譲らない」人って、「本当に席を譲られたい人とそうでない人」の違いがわからないから困っているわけですよ。
 
だったら、譲ってほしい人からそれを申し出れば、すれちがいは100%なくなります。だって、譲ってほしい、って本人から言ってるんですもん。
 
そして、「告白・プロポーズしてほしいのにしてくれない問題」に関して。
 
こちらも非常に明白かつ効果的な解決策がありまして、「女性の側から告白・プロポーズをする」です。
このたぐいの記事から共通して読み取れることなんですが、「少なくとも女性の側は『その男性との交際もしくは結婚』をしたい」んですよ。そして、男性の側に関しては「脈がありそう」みたいなことは書いてあるんですけど、もちろん告白「されたい」、プロポーズ「されたい」と思っているのは、女性の側ですよね。
 
考えてもみてください。相手に対してなにかの「要求したいのかもしれない(が確証はない)側」と「あきらかに要求を持っている側」、どちらが交渉を持ちかけるか―それは後者である、というのは世の中で普通に行われていることではないでしょうか?
 
たとえば、自社の製品を消費者に買わせたい営業担当者はお客を訪問するなり、電話をかけるなりします。
アイドルになりたい人は、たいてい自分からオーディションに応募しますよね? 「私アイドルになりたいのに、渋谷を歩いてても誰もスカウトしてくれないんだけど、いったいどうなってるの?」って怒っている人はどう考えても滑稽ですよね。
 
あるいは、「私、今日の夕飯にシチューを食べたい」という人が、「いつまで経っても近所のスーパーからシチューのルーとニンジンとジャガイモが届かないんだけど」と、「ネットスーパーで注文もなにもしていないのに文句を言う」という場面を想像してみてください。「なら買いに来いよ」という話ですよね。
 
ですから恋愛においても、「告白」という形式を尊重するにしても、女性の側が「告白してほしい」「プロポーズしてほしい」と思っているほど交際あるいは結婚を望んでいるのであれば、女性の側からも告白・プロポーズをすればよいのです。
 
 
もう少し突っ込んだ話をしましょう。
 
僕の個人的な独断と偏見まじりの印象によると、「若者が席を譲ってくれない」という老人の方々は、「席を譲れと頼んで、断られるリスクさえ負いたくない。しかし席は確実に自分に譲られるべきだ」と思っていますし、「男性が告白・プロポーズをしてくれない」と思っている女性の方々は「自分から告白・プロポーズして断られるようなリスクは負いたくない。そのリスクは男性が一方的に負うべきだ」と思っています。
 
彼らがそのように考えているのでなければ「こっちの希望をそっちが先回りして叶えなさい」などという理不尽な願望を抱くはずはないと思いませんか?
 
しかし、そのような自分本位がまかり通るはずがないのはご承知のとおり。「頼めば願いが叶う可能性も高い」から、頼めばいいんですよ。
 
 
トム・ヤムクンでした。

トム・ヤムクン

ライフハックと手帳を駆使して作家を目指している人。得意分野は手帳と日本史。Twitterアカウント:@tomyumkung01 ※このブログはAmazon.co.jpアソシエイトに参加しています。