大学入試の小論文攻略(6)最終回 ~構成編・下~
こんにちは、三度の飯より手帳がスキなトム・ヤムクンです。
以前からお送りしている小論文の書き方シリーズ、今度こそ最終回!
前回は今更ながらの初歩的なお話として、小論文でテンプレート的に使える構成のお話をしました。
今回は、その構成のそれぞれのパートの詳細と必要性のお話をしてシリーズを締めていきたいと思います。
各パートの詳細
テーマの提示
ここでは、「いまから自分が話すのはこういう方向性の話ですよ」とか、そもそもの話の方向性や前提を示します。たとえば「課題文を読んで/グラフを見て問いに答えなさい」といったたぐいの文であれば、ここにその課題文の要約や、グラフの端的な特徴を述べる、ということです。
例:課題文では「バスでお年寄りに席を譲りたかったが、勇気がでなくてできなかった」という経験をもとに、「勇気」のあり方について論じている。
意見
ここには、「テーマの提示」で掲げた事項に関する、自分の意見を書きます。たとえば課題文に対する率直な感想や回答、グラフから読み取れたことを書く、ということですね。「テーマの提示」に「事実」を書くのだとしたら、ここではそれに対する「解釈・判断」などを書く、ということになります。
例:私は、筆者の気持ちはわからなくもないが、やはりここではお年寄りに席を譲るべきだったと思う。
問いかけ
このパートは、この小論文で作者である受験生が、「このあとの本論で、こういう内容を考察していきますよ」と前振りをする部分です。
例:若者とお年寄りが、ともに快適に過ごせる車内にするには、どのような方法が考えられるだろうか。
証拠1.
「証拠」と仮に書いていますが、これはこのあと述べる「主張」のところで、自分が主張する内容が正しいといえる証拠、という意味です。わかりづらければ「具体論1,」でも「考察1.」でもお好きなように名前をつけていただきたいと思います。
さて、ここは上記の「問いかけ(○○には~だろうか?)」に対して、具体的に答える(○○のためには▲▲という方法がある)、という部分です。もうひとつ、このあとに「証拠2.」があるのですが、制限文字数や内容に応じて、この「証拠」は1つにも3つ、4つにもなるでしょう。
例:たとえば@@県の□□市では、市バスにあえて優先席を設けず、すべての席の扱いを同じにし、乗客の自発的な譲り合いを促す、という取り組みをしている。
証拠2.
このパートも、求められる役割は「証拠1.」と同じです。
しかし、ここで重要なのはただ「テンプレートに2つ、証拠を書くよう書いてあるから2つ書こう」ということではなくて、「書いて意味のあること」を書く、ということです。
「証拠1.」と「証拠2.」が同じような内容になる場合は、「こういう例が多くある」ということを読み取ってほしい場合などに限ります。
逆に、「証拠1.」に書いたのが社会的な取り組みであれば、「証拠2.」には友人や知人の体験談を書く、などのバリエーションをつけましょう。
そうすることで、「多角的に検証しているな」という印象を与えることができます。
また、私の同級生の友人は生まれつきある障害を負っていて、そのせいで公共交通機関では優先席を使うのだが、見た目ではその障害を持っていることがわからないため、周囲の理解が得られず大変だ、と言っていた。私はこれに対して、▲▲のような電車があれば、この友人も苦労しないで済むのに、と思うことがある。
予想される反論
ここでは、あなたの意見や、「証拠1.」「証拠2.」で挙げた例に対して、「いや、それは違う」と反対してくる人の意見を想定して、彼/彼女の反論を書きます。
小論文というのは「意見」を書くものです。単純に考えれば、それに自分に対する反論を書いては自分の首を絞めることになってしまいますよね。
しかし、これはこのあとの「反論に対する再反論」で、さらに自分の意見を補強するための手段です。いわば架空の敵を倒すさまを見せることで、ピンチになるどころか自分の腕力の強さをさらに強調する、ということですね。
これらに対して@@と思う人もいるかもしれない。たしかに、私の述べた意見では、**という側面はある。
反論に対する再反論
ここでは、先に提示した反論に対して、自分から再び反論します。「予想される反論」のところで述べたとおりですね。
しかし、%%という例をみてもわけるように、これらは長期的にみれば★★という効果があるのだ。
意見の再提示
ここでは、これまで検証した例をふまえて、ふたたび「ほらね、やっぱり私の言っていることって正しいでしょう」と自分が「意見」のところで述べた内容をふたたび強調しておきます。
このように、若者がお年寄りに自発的に席を譲れるようにする仕組みを整えることこそ、大事なことなのだ。
主張
ここでは、自分のこれまで論じてきた内容を、現実の世の中や人々の行動など、現状にいかに導入するか、ということを述べていきます。
「意見」と「主張」の違いに戸惑うかもしれませんが、「意見」はすなわち事実(なんだか部屋の中が暑い)に対する「解釈・判断(猛暑日なのに窓が閉まっているせいだ)」に対して「主張」とは「その現状を変えるための提案や改善策(窓を開けて扇風機をつけよう)」ということだと思ってください。
ただ、ここではまず主張の大まかな概要のみを述べます。これは、よりインパクトを与えるためです。
私はこれらをふまえて、これから電車やバスなどの車内には□□を導入することを提案する。
主張の詳細
ひとつ前の「主張」のパートで、大まかな主張の概要のみを述べました。しかし、端的な言葉というのはそのぶん具体性に欠けますので、ここでその詳細を補っていきます。
□□というのは、@@@という仕組みのことだ。これによって、若者は迷うことなくお年寄りに席を譲ることができるだろう。
余韻
最後となるこのパートは、とくに具体的な内容に貢献するわけではありません。しかし、ここにいささか情緒的な文を置くことで、フルコースのあとのデザートのようにその文章全体の印象をよりよいものにすることができるのです。
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テンプレートに従って書くことの効用
脚本に関しても以前、似たような話をしたのですが、テンプレートに従って書くことに反発する人もいるかもしれません。「それは部分的なパクリだ」とか、「自分は自由に意見を書きたい」ということなのでしょうが、前例に関して「内容」ではなく「構成」を踏襲することはパクリではありません。そして、「内容を自由に書く」ためにこそ、この「パターンとしての構成」は非常に強力な武器となるでしょう。
あなたの受験がうまくいくことを祈っています。
トム・ヤムクンでした。